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シングルタスク

精神の障害は、クリーンインストールができないからつらい。症状と戦いながら治すというのが、かなりきつい。データを残したまま、システムだけ入れ直せたらどんなにいいだろう。こんなハードモードな人生は望んでいない。


目が覚めたら強迫観念も即座に起動する。おそらくこの時に心拍数も上がっているはずだ。

脳は「あれが心配だろう?」「これも心配だろう?」と強迫してくる。

僕は「そんなことは大丈夫だ」と否定する。否定しながらも、不安だ。

ここで10分くらい耐えられたら僕の勝ちだ。強迫観念は全力で引っ張ってくる。

本当にいいのか? 大変なことになるぞ。お前の大切なものが。なくなるぞ。


目の前に見えていることなのに、確信がもてない。薬が性格に影響するなら、いったい自分はどこまでが自分なのかわからなくなる。こんな小さな白い粒が僕をコントロールしている? 脳内物質の流れが自分というものの正体なのか? 意識はどこからきた?

 

 障害をいったん横に置いておいて、休養して、元気になったところで戦いたい。攻められて攻められてフラフラの状態なのに、まだ戦って克服することを求められるのか。

しかし戦いを仕掛けているのも不可分の自分なのだ。わかっている。

 

 複数のことを同時にやるのが苦手だ。バスケットボールのシュート練習は好きだし、それなりにリングにも入る。でも、試合が始まって、相手がいる状態になると練習したはずのシュートが打てない。相手を振り切るのとシュートすることを同時にやるのが僕には難しい。

 

 ここで現在92拍/分だ。完全に一人の世界に入っている。

 でも話しかけられたら「はい、大丈夫ですよ」などと普通に返答するだろう。

 みんな一人の世界が好きだ。パソコンのデスクトップは脳内の一部を反映している。自分なりの設定があって、やり方があって。向き合っていれば、何時間でもやっていられる。キーボードとマウスで操作できる自分の世界。自由に配置できる。なんて面白いんだろう。


 立ち上がって社内を歩き回ってみる。いつものみんなが、それぞれパソコンに向き合って作業をしている。とても楽しそうだ。少なくとも僕にはそう見える。マウスのクリック音がする。人によっては気に触るかもしれない。


カップに冷たいお茶を注いで、自分の席に戻る。

またキーボードをカタカタと打ち始める。


ベストライフ、今日も順調です。


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